●上野 貴プロフィール
松末郵便局見学

2002年4月17日(水)19:30より第3回未完塾が行われ、未完塾としては初めて講師を招いての「見学&ミニ講演会」を開催しました。遅い時間にもかかわらず郵便局の内部を見せていただき、上野さん、木田郵便局長に設計にあたってのお話を伺いました。

松末郵便局は、旧国道11号線に面した交通量の多いところにあり、郵便局とは思えない洒落た外観でとても目を引きます。設計依頼のきっかけは、木田局長が、上野さんの設計で建てられた知り合いのお宅を気に入られたことからだそうです。
郵便局は職員の人数によって建築面積や建築予算がほぼ決まり、自ずと、業務を行う場所、待合スペースの広さや休憩室、トイレ、キッチン等の面積が割り出されます。松末郵便局は5人体制とのこと。広さは165平方メートル、予算は????万円。ポストは必ず設置し、建物に付けるサインや受付表示、カウンターの高さや色、備品までが決まっていて、とても制約が多く、設計には苦労されたようです。(この基準はマイナーチェンジこそあったものの、なんと、昭和30年前後から変わってないないとか)郵便局といえば、地味で簡素、どこも代わり映えがしないといったイメージをもっていましたが、ここまで冒険ができるということがわかって、上野さんのこだわり、研究心がうかがいしれました。
ところで、屋上まで通じる階段には、いつもロープが・・・??上がれないの?・・・というみんなの疑問。それは予想通り、事故がおきてからではおそい!といった、責任問題からでした。ただ、開放していないわけではありません。声をかければ職員の方の管理のもと、ちゃんとあがらせていただけます。
この階段には、春はお雛さまが飾られ、冬はイルミネーションが輝きます。松末郵便局のコンセプトは「楽しい郵便局」そして「町のシンボル」です。町全体が喜び、うれしい気持ちになって、コンセプトは満たされていると言えると思います。が、もっとアイデアがあるかも?と思います。私自身も屋上に上がって木田局長に「夏はビアガーデンなんかできますね」と軽はずみに尋ねると、「民営化すればできるかな?」とおっしゃってました。花火を見たり、星を見たり・・・そんな利用もできないものでしょうか。規制はありますが、アイデアを募集されているようなので考えてみませんか?

松末郵便局見学風景

ミニ講演会

「まんま家 ちょくちょく」(自然派田舎料理が美味しいお店)に場所を変えてスライドを見ながらのミニ講演&会食です。まず、お仕事を拝見。ブロンズ像だけを集めた美術館「久万青銅之廻廊」は、自然環境を壊さないやさしいフォルムと久万の積雪に耐えうる頑丈な設計(梁がクロスしていたのはガウディのグエル公園の影響でしょうか)、そして視界を遮らないように外の景色に溶け込むガラス張り・・・とてもすてきな空間です。
ちなみに詳細を調べてみましたので、久万高原のさわやかな風のなか、ブロンズ像を見にでかけましょう。
●場所/久万カントリークラブ入口より300m
●開館時間/10:00〜17:00(4月〜11月)月・火休み:自然の摂理に基づいて開館します
●入場料/一般500円(お茶・お菓子つき)

その他、無機質なH綱とコンクリートの要所に杉板をとりいれた住宅兼事務所と、二世帯住宅のエピソード。二世帯というと(無理しても)ひとつ屋根の下で暮らすものだという認識でしたが、二家族の間にこれほどはっきりした、まさに厚い壁があるとは・・・・あっちとこっちで冷や汗をかきながら打ち合わせしている上野さんの姿が目に浮かび、思わず苦笑してしまいました。唯一、4階に通路を設けてあったのは上野さんのこころ配りでしょう。

最後のヨーロッパ巡回旅行のスライドは、中身が濃く、建築の歴史、移り変わりなどを盛り込みながら、上野さんの知識の深さを知る時間になりました。アールヌーボーの装飾やディティールなどをたくさん写真に収めていらっしゃいましたが、どこを切り取っても絵になる風景と、いたるところで巨匠あるいは当時の職人技が生きる仕事が見られるとは、贅沢で刺激あふれる旅だったんだろうなと思います。私も思いだします。グレー色のJALマーク(本当は赤です)、美術館で走り回る子供たち・・・。街の景観を守る規制は厳しいけど、学ぶところではとても大らかなパリの街。日本とは大きく違っていて驚きでした。感性の違いは、環境の違いであることを今さらながら感じます。
ヨーロッパ建築についてのお話は、盛りだくさんだったのであらためて聞いてみたいなあというのが正直な感想です。また、いつもやさしい笑顔の上野さんですが、これからの建築家としての社会性や責任、景観への配慮について語る姿は、強く大きく感じられました。これからもあたたかさと愛情あふれる建築を見せてください。ありがとうございました。

光盛 香奈子

久万青銅之廻廊 全景 久万青銅之廻廊 室内風景
二世帯住宅K邸 2階エントランス